※この記事はネタバレを含みます。
ご覧になる際はご注意ください。
みなさまは『ねぇねぇねねさん。』というマンガをご存じでしょうか。
出典:ねぇねぇねねさん
『ねぇねぇねねさん。』は『死がふたりをわかつとも』を代表作とする、天色ちゆ先生が集英社公式アプリ、「ジャンプ+」にて掲載された読み切りです。
今回は『ねぇねぇねねさん。』の感想をお送りします。
あらすじ(ネタバレ注意!!)
OLの寧々は困っていたところをアパートの隣に住む大学生・凛太朗に助けられ、完全に胃袋をつかまれます。
そしてある日、寧々は凛太朗をデートに誘いますが、断られてしまいます。
にも関わらず、それ以降も寧々の家に通い続ける凛太朗。
たまには自分から凛太朗の家に行こうと思い、寧々は隣の凛太朗の家を訪ねますが、そこはもぬけの殻で、数年間人の住んでいた形跡がありません。
そして、寧々は凛太朗との本当の思い出を思い出します。
本当は、凛太朗と結婚していたこと、凛太朗との間に娘がいたこと、自分は既に事故で死んでいること………。
すべてを思い出した寧々はいつものようにやってきた凛太朗にすべてを思い出したことを告げ、ある約束をして、寧々は凛太朗の前から消えます。
寧々の死から立ち直れず、前を向くことができていなかった凛太朗は寧々との約束を守ることを娘の菜々に誓うのでした。
登場人物
有栖川寧々
出典:ねぇねぇねねさん。
アラサーの独身OL
天然で子供っぽい
神岡凛太朗
出典:ねぇねぇねねさん。
大学生で一人暮らし
大学で垢抜けした
モテるために料理の練習中で、アドバイスをもらうために寧々さんに料理を作るようになる
感想
総評
ぶっちゃけ、僕は今後、この作品を超える読み切り作品には出会わないかもしれません。
数ページ読んだだけで見入ってしまう絵、美しい絵に合った物語の内容、多すぎない伏線、飽きさせない緩急のつけ方とすべてにおいて、読み切り作品として完璧に近いレベルでバランスが取れていると思います。
それほど素晴らしい作品です。
冒頭でこれだけ褒めちぎった僕が『ねぇねぇねねさん。』を読んだ感想を率直に申し上げると、
「やられた~~!」です。
というのも、表向きはTwitterやインスタでよく創作として掲載されている「できる男子大学生とだめなOLの恋愛」を描いた作品です。
僕も前半を読んでいるうちは、そのように考えていました。
よくある作品だとなめていた、といっても過言ではありません。
しかし、後半に入り、凛太朗とその彼女の寧々さんの関係性が判明したことで、甘々の恋愛マンガだとたかをくくっていた僕は意表を突かれてしまいました。
僕は美容院の待ち時間にこの作品を読んでしまい、大泣きしました。
なので、これからこの作品をお読みになる際には、泣いてもいい場所で、ハンカチを用意してお読みください。
内容について
この作品は「起」「承」は寧々さん視点、「転」は寧々さんと凛太朗二人の視点、「結」は凛太朗視点で物語が進みます。
「起」で寧々さんが凛太朗に疑心を抱いていることがうっすらと描写されています。
ですが、凛太朗にからかわれて、照れている寧々さんが可愛すぎるので、そちらに目が行ってしまい、あまり頭に残りません。
赤面した寧々さんが可愛すぎる。
「承」で寧々さんの持つ凛太朗への疑心が加速すると同時に、寧々さんに、より大きな秘密があることを明かすことで、読者が抱く凛太朗方向の疑心を寧々さん方向に一気に向かせます。
ここから、怒涛の伏線張りとその回収が行われます。
これまで、「そこまで頭を使う作品ではない」と気を抜いていた読者に強力なビンタを食らわせ、目を覚まさせるのです。
「『ねぇねぇねねさん。』は他の有象無象とは違うからよく見ておけ。」と
「転」で寧々さんの秘密を具体的に明かし、凛太朗目線の回想を挟むことで、寧々さんが死んでからこれまで、凛太朗がどのような想いで寧々さんと接していたのかを読者に実感させます。
また、これまで寧々さん視点で物語を描いてきたことで、読者は記憶を取り戻す前と後の両方から寧々さんの気持ちも実感でき、二つの視点から登場人物の心情を体験できます。
僕はここで涙腺崩壊。
どの方向から物語をみても、泣くことしかできなくなりました。
最後に「結」で凛太朗と娘の菜々ちゃんの2人のこれからを暗示し物語は終わります。
これが、僕の『ねぇねぇねねさん。』の内容についての感想です。
注目ポイント
ここでは、今後、『ねぇねぇねねさん。』を読まれるにあたって僕が注目してほしいところをピックアップします。
ポイント1:伏線の張り方
上述しましたが、この作品は緩急のつけ方が素晴らしいです。
読み切り作品においてこれ以上ないといっても過言ではありません。
読み切り作品は一つの話が長い(60~80ページほど)ため、読んでいて、「もういいや。」となってしまうことが多いです。
こうならないために重要なのが「緩急をつけること」だと僕は思っています。
緩急をつけることで、読者に常に新鮮な気持ちで作品を読んでもらうことができます。
そしてこの作品では、この「緩急」を「伏線」が担っています。
伏線を張ることで、読者に物語の予想をさせます。予想をすると答え合わせがしたくなりますよね。
なので、読者に最後まで読んでもらえる、というわけです。
この作品の場合、「起」で少しの伏線を張りつつも、メインは寧々さんと凛太朗の甘酸っぱい恋愛のようすです。
60ページの間ずっと二人のいちゃいちゃを見せつけられるとなると、正直、胃がむかむかします。
ですが、ほんの少し「伏線」というアクセントを加えることで緩和させます。(二人の純粋ないちゃいちゃもここまでです。)
そして、「承」にて「起」で張った伏線を発展させて大きくし、注意深く読んでいなくても気づくようにします。
すると、読者は伏線を意識するようになり、より物語にのめり込むことになります。
そこらの読み切りだと、序盤の物語の緩急が少なく、飽きてしまうことが多いです。
実際、僕は読み切り中盤で飽きてしまうことがよくあります。
この緩急がある・ないによって読み切りの出来が大きく変わってくるので、ぜひ注目していただきたいです。
ポイント2:予想の付かない展開
ポイント1でもお話しましたが、読み切り作品において、「読者に飽きられない」ことは非常に重要です。
このために「緩急をつける」ことが重要だというのがポイント1ですが、これと同じくらい重要なのが、「予想を的中させない」ことだと僕は思います。
というのも、この作品が、表向きは「よくある恋愛マンガ」だというお話はしましたね。
このまま物語が進むと、「なんやかんやあって二人が付き合うのだろう。」と、結末がなんとなく予想できてしまいます。
読み切りの場合、「結末が分かっているちょっと長いマンガ」を読み続けようとは思いませんよね。
なので、「予想を的中されない」のはとても大切なのです。
この作品の場合、寧々さんが既に故人である、と明かされる前にこの事実に気づけた人はどのくらいいたでしょうか。
ほとんどいないと思います。(僕はまったく気づきませんでした。)
理由はおそらく、作品のテイストがガラッと変わったからではないでしょうか。
甘々から、一気にシリアスで悲しげな雰囲気に変えることで予想の付かない展開に持っていくことができます。
こうすることで、読者は結末が読めず、続きを読みたくなるのです。
さいごに
今回は『ねぇねぇねねさん。』を読んだ感想をお送りしました。
この記事を読んで、「『ねぇねぇねねさん。』を読んでみたい」「興味がわいた」という方がいらっしゃいましたら、こちらから「ジャンプ+」に飛んでご一読ください。
では!